【ゴルフ肘】肩関節外旋に可動制限がある一例
『当院での対応例』
男性ゴルファー ゴルフ歴3年 アマチュア
ゴルフ肘と病院で診断を受け来院された。コロナ禍を機にゴルフを始めたそうで、歴は3年ほど。肘の痛みはここ1か月ほど気になっており、最近ではスイングするたびに痛みを感じるようになった。整形外科では痛み止めを処方され、痛みの具合によって服薬していたが、薬の効果も感じなくなってきており、根本的な治療法補を求めて鍼灸院を探していた。
[初回検査]肘関節内側に著明な圧痛を確認。手を握る動作でも痛みが再現される。股関節、肩関節、胸郭に可動域の制限あり。特に右肩関節の外旋が狭くなっていた。もともと野球で投手を務めていたことがあり、肩を痛めた経験があった。
[施術]肘周りの筋緊張が強い筋肉に対して低周波鍼療法を行う。他動痛に関してはなくなったが、圧痛に関しては軽度の緩和にとどまった。肩回り、背部や股関節周囲のバランスを整え終了。
[セルフケア]各関節の制限に併せてストレッチとエクササイズを確認。次回までの間、続けて頂く。
[施術頻度・間隔]痛みや症状が気になる期間は1週間から10日後に再来いただくことが基本となります。その後はセルフケアの状況や症状により相談となります。痛みがあるときに治療に行く方は多いと思いますが、調子の良いときに体を見せて頂くと、その状態をキープするためのセルフストレッチのご提案ができます。特にゴルフでは、体の柔軟性低下などは、痛みのある時には判断がつきません。痛みの治療から、今の状態をキープするための治療やメンテナンス方法の取得に切り替わるゴルファーが最近は増えてきています。
『ゴルフ肘とは』
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)は、肘の内側(小指側)に痛みが起こるケガの一種です。肘の内側の骨を押すと痛みを感じることがありますが、その部分のついている筋肉の腱が炎症を起こしている状態となります。痛みは前腕や手首にも及ぶことが多いですが、ゴルフの動作時だけではなく、カバンを持ったり、手首を捻ったときにも痛みを生じることがあります。ですので、ゴルフ肘の原因が決してゴルフだけではないこともあり、職業で絞るとデスクワークや専業主婦の方の発症も見受けられます。
『初期症状』
ゴルフ肘の初期症状は、肘の内側に痛みや圧痛が出ることが多いです。初めはだるいような筋肉痛を感じることが多いので少し休むことで痛みは治まります。次第に練習などの後に痛みが続くことや、スイング中にも痛みが感じたり、さらに症状が悪化すると日常生活でも痛みを感じます。痛みは体が発している赤信号と言われています。痛みを感じる能力がある以上、その信号に従うべきではあるのですが、大した痛みではない場合は放置して、痛みが無くなるのを待つのが一般的です。しかし、痛みの専門家などは、まず痛みが出ている時点で、ある程度の危機感を覚えてほしいと考えます。
痛みが出るにはそれなりの時間の経過が必要です。ゴルフなどの反復練習が必要な競技は特に、特定の部位に負担がかかり続けるので、疲労の蓄積によって筋肉や関節の動きのバランスが崩れます。それらを痛みとして体は教えてくれているのです。
また、痛みがある状態でゴルフスイングを行うと、痛みを避けたスイングとなります。専門的なトレーニングやトレーナーがついているプロゴルファーの場合でも、一度崩れた動きを元に戻すのは難しいです。それをアマチュアゴルファーが自力で調整するのは至難の業です。
ゴルフ肘に関しては、痛みが出た段階で、いかに自分の体と向き合うことが出来るのかが生涯スポーツとしてのゴルフを長く続けられるかの分かれ道になると考えています。
『チェック方法』
肘関節を伸ばして、内側の出っ張った骨の部分を押して、痛みがあればゴルフ肘の疑いがあります。激痛ではないにしても、鈍痛がある場合はゴルフ肘の初期段階です。
『早く治す方法』
痛みがあるうちはスイングを控えることが一番の解決方法になります。それに加え適切な治療とセルフケアを行うことでさらに治癒に近づきます。初期の処置としては、患部を冷やす(アイシング)、痛みを抑える薬(消炎鎮痛剤、湿布、注射)を使用する、サポーターやテーピングを行うなどの方法がありますが、どれも痛みをごまかしていることに注意が必要です。
せっかくですので、ゴルフは腕だけを使っているスポーツではないことを再確認してください。スイングでも移動でも下半身をよく使うスポーツです。肘を安静にしているときは、下半身を鍛えるチャンスでもあります。ただの安静ではなく、積極的な安静をオススメします。治癒の目安は、3か月から6か月と言われています。痛みを我慢してプレーをすると慢性痛をなり1年以上の痛みともなります。
セルフケアでは、前腕のストレッチが効果的です。筋肉を伸ばすことで肘周辺の筋肉の血流が良くなり、炎症や痛みの緩和にもつながります。また、肘の可動範囲にも良い影響が出ます。肘の痛みにより、上腕の筋肉にも硬さが出ていることもありますので、あわせて取り組んでみてください。肘などのストレッチは、椅子に座ってできるものなので、仕事や家事の合間にも取り組めます。
『放置すると』
ゴルフ肘を放置したり、適切な処置を行わずに続けていると、ゴルフ肘自体の治りは悪くなり、さらに肘関節以外の他の部分にも影響が出ます。特に手首に痛みが出てしまうとスイングが全くできなくなるなど、早期に対処することが重要となります。ゴルフ肘を抱えながらスイングをしていて自然に治ることはほとんどないとお考え下さい。
痛みが重症化すると手術が必要になるケースもあります。ゴルフ肘かな?と思われたら、まずは整形外科で骨に異常がないかチェックをしてもらうことをおススメしています。整形外科では、痛み止め(鎮痛薬、湿布)などの処方がされると思いますが、それらは痛みを取るための治療で、ゴルフ肘の根本的な処置ではありませんのでご注意ください。ゴルフ肘になぜなってしまうのか、その原因は肘以外にもあるのかどうかのチェックが必要です。整形外科で骨に異常がなかった場合、その後はゴルフ治療に詳しい専門機関に依頼することが良いです。
『ゴルフ肘のサポーター』
ゴルフ肘のサポーターはこちらになります。
痛みが強く日常生活に支障が出る場合は使っていただいても良いと思いますが、スイングで使用するのは、ただ単に無理をすることにもつながりかねませんので、基本的にはおすすめしていません。治療に行きよりは安価なこともありますので、試しで一つ持っているのも手かもしれません。
『原因』
ゴルフ肘の原因は日常生活を含めると様々ですが、ゴルフに焦点を絞ると次のような原因が考えられます。
・グリップを握って手首を反ることで「手根伸筋」を酷使する
・手先でスイングする
・グリップに過度な力を入れる
・両肘に力を入れすぎる
・スイング時に肘からわきが離れすぎている
ゴルフ肘は、特にスイングが安定していない初心者や中級者の方に多く見られますが、ベテランのゴルファーやプロでも発症することがあります。発症のきっかけは、練習のし過ぎに起因することが最も多く、それに伴った筋力や柔軟性、スイング動作のバランスが取れていないことが考えられます。ゴルフスイングによるオーバーユースによって、繰り返しの負荷がかかり、炎症が起こるとされています。
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